キカシ

 キカシとは、次の条件を備えた着手をいいます。

 先手で打てても相手の応手が自分の着手の価値より低くなければキカシとは言いません。

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 左図、デは先手で白地を1目減らしたと喜んで打つ初級者が多いですが、これはキカシではなく身ダメを詰めた悪手です。
 また、この手を打つことによって2からのノゾキが打てなくなりますから黒Aツメの価値が激減してしまいます。
 デは劫立てとしても損劫なので打ちたくない手なのです。
 先手で打った手がキカシになっているかなっていないかは微妙な場合が多く、正しい判断ができるのも棋力のうちです。
囲碁格言:キカシと悪手は紙一重
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 左図の大ゲイマシマリにカタツキからハネまで先手でキメた折衝は、この白石がこれからの戦闘に役立てばキカシになっていますが、役立たない場合は大ゲイマシマリを固めたアジ消しの悪手になります。
 序盤早々にを打たれた場合は、この手をキカシにするか悪手にするかを巡ってこれからの着手が配慮されるようになります。

 相手の着手より価値の低い手で応じることをキカサレといいます。
 ただし、後続手段として保留されていたキキに応じるのは相手が債権を回収したにすぎませんからキカサレとはいいません。
 キキを決めることをキカスと表現しますが、キキを決めらることはキカサレとは限りません。
 したがって、キカスことはキカシになるとは限らないのです。
 例えば、上図はキキに応じてはいますが、キカサレとはいいません。

 キカサレは、みすみす損をすることになるのでキカシに来た石に反発して戦端が開かれることが少なくありません。
 反発するのが無理な局面ではキカサレに甘んじて受けても、その着手の価値が高くなるように進めるのが戦略のポイントになります。

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 左図、黒◆の挟撃にのスベリは白の早治まりを図る常用の分かれです。
 黒◆と白とを比べると黒◆の方が価値が大きいので黒◆はキカシとみなせますから、これが白◇を攻めて得た利益といえます。
 左下の白が強いときは白はキカサレを嫌ってスベリコスミの交換をせず、白Aや白Bにハサミ、黒◆を逆襲することになります。
 左下に黒があって逆襲は無謀のときはキカサレに甘んじますが、左辺を黒地にさせればスベリが黒地を侵略した価値のある手になるので左辺を黒地にさせるように作戦を立てることになります。

 キカシに相手がキカサレた場合は、その部分の折衝は技ありで完結したのですからキカした石は軽く見て打たなければいけません。
 キカした石の方がキカされた石より能率が優れているからキカシになっているので、キカした石にこだわって手を加えるのは好きこのんで石の能率を低くすることになってしまいます。
 また、キカした石を重く動き出すのは、キカされたはずの石が隠忍自重して力を貯めた好着になってしまいます。

囲碁格言:キカした石を惜しむな
 キカシた石をすぐに動き出さなければいけない場合は、その石はキカシではなく戦いに必要なキキを決めたにすぎません。
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