持ち時間

 棋戦を運営するときは1局をどれだけの時間で終わらせるかということは主催者にとって重要な問題です。
 対局時計が普及していなかった頃には、終了させたい時間の10分ほど前に棋戦運営役員が進行状況を見回り、終わりそうもない対局について両者同時に30秒以内に打つよう腕時計を見ながら秒読みをするということが行われていました。
 このシステムだと相手が長考派で一方的に時間を使っている場合でも同じ条件で秒読みされますから大迷惑です。
 序盤早々に大石を取られたとき考えたふりをして両者秒読みになるまで着手しないという戦術をとる輩まで出現することがあります。
 このような弊害を避け、対局者両方に公平に時間を使えるにするのが持ち時間システムで下記のような方式があります。
サドンデス方式(切れ負け制、打ち切り制、包干制)
 対局者両者に一定の持ち時間を与え、持ち時間がなくなると負けにするシステムで、切れると負けなので切れ負け方式とも言われています。
 ほかのどの方式でも時間が切れると負けなのですが、与えられた持ち時間を使い切ると即負けになので切れ負けの印象が強調されているようです。
 この方式は負けている側が無駄な手を打って対局を長引かせて相手を時間切れに追い込む戦術ができるからよくないという批判をする人が多いですが、お互いに同じ条件で持ち時間が与えられているのですから時間配分が悪くて時間が切れたの相手を詰るのは逆ギレといえるでしょう。
 単純明快に対局を所要時間内に終了させることができるのはサドンデス(突然死)方式に勝るものはありません。
 1ゲーム1時間半で終了させる必要があるなら、持ち時間45分に設定すれば両者切れ負け寸前になったとしても1時間半未満で終了します。
単純秒読み方式(限秒制)
 最初に与えられた持ち時間がなくなると決められた秒数(秒読み時間)以内に着手する方式です。
 この方式でも決められた秒数以内に打たなければ切れ負けなのですが、最初の持ち時間が切れても1手ごとに時間が与えられているのでサドンデス方式よりは切れ負けになりにくいことでアマ棋戦でも決勝戦その他大事な試合に採用されています。
 秒読み時間は、アマ棋戦では30秒、プロ棋戦では1分(60秒)が多いです。
 通常、残り30秒から10秒単位で経過秒を知らせ、残り5秒になると5・6・7・8・9と秒を読み10を読まれたら時間切れ負けになります。
 時間切れになることを防ぐために、碁の流れとは関係なく絶対のキキを打って相手に応じさせ、次の秒読み時間を得ることを時間ツナギといいます。
 秒を知らせる合図を秒読みといい、最後の1秒単位の数の読み上げを数読み(カズヨミ)といいます。
 数読みではなくピーっという連続音が鳴り、音が鳴りやむと時間切れという時計を使う場合もあります。
 秒読みは、突然死的な時間切れ負けを防げる利点がありますが、短い対局時間を設定しなければならないときには無理があります。
 1局250手だとしても秒読み30秒だと両対局者が時間ぎりぎり29秒使うと秒読みだけで2時間使ってしまいます。
 対局を1時間半で終了させなければならない場合、最初に与える持ち時間を15分に設定すると秒読みは15秒が限度となります。
 私は、持ち時間15分秒読み15秒の秒読み方式より持ち時間45分のサドンデス方式の方が落ち着いて対局できると思っています。
 対局を1時間で終了させなければならない場合、サドンデス方式なら持ち時間30分与えることができますが、秒読み方式だと初手から秒読み15秒にしなければなりません。
 時計を打っているのか碁を打っているのかわからないゲームになりそうです。
複数回秒読み方式
 最初に与えられた持ち時間がなくなると決められた回数の秒読みが行われる方式です。
 秒読み30秒、回数5回と設定された場合は、30秒をすぎると回数が残り4回に減るというように秒読み時間を超えると残り回数が1つずつ減り、残り1回になったとき数読みが切れると時間切れ負けになります。
カナダ方式
 最初に与えられた持ち時間がなくなると、所定の手数を決められた秒数以内で打つ方式です。
 インターネット対局サイトで多く使われていて、25手単位が普通です。
 1局250手とすると、25手9分だと最初の持ち時間がゼロでも両者時間をフルに使うと対局時間は1時間半を要します。
考慮時間方式
 持ち時間はなく最初から秒読みが行われます。
 ただし、決められた回数の考慮時間が与えられます。
 この方式はNHK杯トーナメントで使われるようになったのでNHK方式ともいわれています。
 NHK杯トーナメントは、秒読み30秒、考慮時間60秒10回となっています。
累計加秒方式
 最初に与えられた持ち時間に1手打つ毎に決められた秒数が持ち時間に追加される方式です。
 累計加秒方式は決められた秒数より早く打てば、余った秒数が持ち時間に追加されることになりますから、秒読み式のように余った時間が無駄になりません。
 持ち時間15分追加時間15秒で始めても、布石で時間を費やさなければ中盤で30分以上の持ち時間になって手どころで熟慮が可能になります。
 累計加秒方式は、考案者であるボビー・フィッシャーからフィッシャーモード(Fischer mode)ともいわれています。
延長時間コミ出し方式
 最初に与えられた持ち時間がなくなるとコミを出して持ち時間を延長する方式です。
 応昌期杯(Ing Cup)世界プロ囲碁選手権戦の持ち時間は、持ち時間が3時間30分、それが切れると1回につきコミ2目で3回まで30分持ち時間が延長できるようになっています。

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