ノゾキ

 ノゾキとは、相手が手抜きしたら相手の石を分断することができる手をいいます。
 ノゾキに対して相手がツギを打てば分断することはできませんから、分断する価値が高いところをノゾクのは次は相手の手番ですから喜んでツガレて相手を固めるアジケシの手になってしまいます。

囲碁格言:切れるところをノゾクな
 ノゾキの目的は、切ることではなく、相手にツギを打たせることにあります。
 ただし、シチョウアタリまたは劫立てとしてノゾキを打った場合は、相手はノゾキに挨拶せずシチョウまたは劫を解決し、分断する手順に回ることができることもあります。
 また、両ノゾキの場合は、相手は両方同時にツグことができませんから、どちらかを切ることができます。
 なお、ノゾキの目的が切ることではなくても、相手にとって切られても痛くも痒くもないところをノゾいたのでは手抜きされて空振りになってしまいます。
囲碁格言:切れないところをノゾクな
 ノゾキを打つ主な目的を列挙してみましょう。
シチョウアタリ
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├▲▲┼▲┼▲┼┼┼┤
├○○○▲┼┼┼┼┼┼┤
├┼┼◆あ┼┼┼・┼┤
├○○○▼┼┼┼┼┼┼┼┤
├▼▼▼┼┼┼┼い●┼┤
├●┼┼┼・┼●●┼┤
├●○○┼┼┼┼┼●○○┤
├┼●┼┼┼┼●┤
├┼●●┼┼●┼┤
├●●┼●┼●┼┤
├●●┼┼┼┼┼┼┤
└●┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘
 白◇は、白が他を打てば黒キリを打ち、黒◆を取りながら黒の▲群と▼群を分断するノゾキと白☆の逃げ出しを睨んだシチョウアタリを兼ねた手です。
 黒ツギと◆を助けながら▲群と▼群を連絡すると白ノビで白☆を逃げ出してしまいます。
 黒ヌキと白☆を取ると白キリで黒▲群と▼群を分断します。


劫立て
 劫が大きい場合は、相手が劫を解決して切る手順に回る可能性があります。
 ノゾキの場所を連打する価値が劫の価値に見合う必要があります。
将来への備え
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┃  (1)  │  (2)  ┃
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 左図(1)白◇ノゾキは左図(2)になったとき、黒からのデギリを防ぐためのノゾキです。
 黒・白・黒のデギリは白アテ・黒ノビ・白オサエで白1ノゾキが役に立って黒がとられてしまいますから成立しません。
 黒は、この段階では白1ノゾキに黒2ツギと応じますが、白1ノゾキを省略して白3カケを打ち黒4ツケコシ以降の折衝が始まると、この白1ノゾキに応じるとは限りません。

 ノゾいた石が将来なんの役にも立たないのにノゾクのはアジケシなうえ、劫材を1つ浪費したことになりますからノゾキを打ってはいけません。
 また、いつでも必ず利くノゾキなら、その石が必要となるときまで保留するのが味わい深い打ち方です。

愚形にする
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┃├┼い┼│├┼┼┼┼┃
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 左図(1)黒1ノゾキは白2ツギと白の形を陣笠の愚形にするのが目的です。
 この後、黒ツギを打つことができれば上辺の模様は雄大になりますが、白デも黒を固めるので打ちにくい意味があり、黒1ノゾキ・黒3コスミのコンビネーションで上辺に対する黒の発言力は大きくなります。
 しかし、陣笠とはいえ白も強固になったので黒ウチコミの狙いが消えてしまうので黒1ノゾキ左辺に関してはアジケシの意味があります。
 そこで現代では木谷九段が打ち出したノゾキを打たず黒打ち込みの狙いを残した左図(2)1間トビが主流になりました。
眼形を奪う
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├┼┼┼┼┼┼┼
├┼●●┼┼┼┼
├┼・┼┼●┼
├●●┼┼┼┼
├┼○○┼┼
├◆┼┼┼┼┼┼
├┼●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
 左図の黒◆ノゾキは白の眼形を奪うノゾキです。
 ◆の位置は根拠の要点です。
 白◇トビで白◆コスミと根拠を確保するのは立派な手ですが、黒ハネを打たれることになります。
相手の石を重くする
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├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼・┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼あ┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼・┼┼┼┼┼
 黒1ノゾキは白2ツギと白を重くして黒3トビなどと攻めるためのノゾキです。
 黒1ノゾキをキカサないで黒3トビと攻めるのは白あ大ゲイマと馬の顔でくつろがれてしまいます。
守る前のキカシ
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├┼┼┼┼
├┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
├┼┼
├あい┼
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├┼┼・┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
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 左図、白1ノゾキは、の断点を防ぐ白3カケツギを打つ前のキカシです。
 白3カケツギを打ってからでは白1ノゾキに黒2ツギと受けてくれるとはかぎりません。
 白1ノゾキ黒2ツギの交換があると黒ノゾキは黒が愚形になるので打ちにくくなります。

 白1ノゾキで白いノゾキは黒2ツギとなり先手での断点を守ることができますが、黒の背中を厚くした損は、先手を得た代償としては大きすぎます。
 一般に、守りをノゾキで間に合わせるのは姑息な手であることが少なくありません。
 後手でもしっかり守って後続手段を狙う方が本筋です。

先手で守る
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├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼┼あ┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
 左図、黒1ノゾキに対する白2ノゾキと白4ノゾキは先手で連絡するのが目的のノゾキです。
 ただし、白は先手を得ましたが左辺の黒を固めた嫌いがあります。
 黒1ノゾキは白からのノゾキを誘い、左辺を固める役を演じたことになります。
 黒1ノゾキに白ツギなら左辺の黒はアジワルで黒地とはいいきれません。
 ただし、白ツギだと黒が先手になりますから白に対する攻めを続けることができ、白に左辺の黒のアジワルを咎める手順が得られるとは限りません。
 左辺の狙いを捨てて中央に先制するか、後手に甘んじて左辺の狙いを重視するか戦略の分かれ目です。
侵略の手がかり
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├┼┼┼┼┼
├┼┼●┼┼
├┼あ┼┼
├┼┼●┼┼
├┼┼┼┼┼
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├┼●┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼・┼┼
 白◇ノゾキは黒模様侵略のための足がかりとするためのノゾキです。
 白◇ノゾキに対して黒ツギで白をそっくり取られることになると黒を固めたモチコミになってしまいますから、成算がなければ内側からのノゾキを打ってはいけません。

ノゾキのいろいろ

生ノゾキ
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┼┼┼┼┼┼┼┤
┼┼┼┼●●┼┤
┼┼┼┼う┼┤
┼┼┼●●┼┤
┼┼●○○あ┼┤
┼┼┼┼◆┼┤
┼┼┼┼●┼┼┤
┼┼┼┼・い┼┤
┼┼┼┼┼┼┼┤
 左図の黒◆ノゾキは、白ツギとなって先手で左辺を強化したように見えますが、白アゴの急所が残り、左辺を強化したとは言い切れないばかりでなく、白デがキビシクなるので悪手となる場合が多いです。
 このようにツガれた石に接触するノゾキで、悪手になる可能性が高いノゾキのことをナマノゾキといいます。
ハスカイノゾキ
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├┼
├┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼
├┼A┼┼┼┼┼
├◆B┼┼┼┼┼┼
├┼C┼┼┼┼┼┼
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├┼┼┼┼┼┼┼┼
 左図の黒◆のように断点()の斜めに打つノゾキをハスカイノゾキといいます。
 ノゾキに白Aツギに受けさせて白全体を攻めるのが黒◆ハスカイノゾキの意図です。
 白Bカケツギでも黒Cオサエで白は浮き石ですし、白Cハザマの反撃は黒Bデで無理です。
 黒◆ハスカイノゾキで黒Bノゾキを打ち白Aツギ黒◆サガリの手順でも白を浮き石にできますが、黒Bナマノゾキだと白◆ツケで白にサバカレてしまいます。

 ハスカイノゾキは、ツギと換われば非常に働いたノゾキになりますが、切らなければならないようになった場合はコスミ切りになって迫力に乏しい嫌いがあります。  

両ノゾキ
 左図、黒は、AとBの断点をノゾいた両ノゾキです。
 白は、同時に2つのツギを打つことが出来ませんから、どちらかは切られることになります。
 マガリトビは両ノゾキが相手からの狙いになりますから両ノゾキ対策への配慮が必要です。
 ただし、切った形がコスミ切りなので戦果が得られるとは限りません。
 不用意に両ノゾキを打つとカウンターパンチを喰らって形勢を損じることがあります。
 両ノゾキを打つときは自分自身がダメヅマリにならないようにする備えが必要です。
囲碁格言:両ノゾキはダメヅマリに注意
タケフの両ノゾキ
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┼┼●●┼┼
┼ab┼
┼┼●●┼┼
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 左図の黒の形は竹の節のような形をしているのでタケフといいます。
 タケフは白aと打てば黒b、白bと打てば黒aで連絡しますから切ることができません。
 タケフの両ノゾキとは左図の白△と▽のように切れないタケフをノゾイた形をいいます。
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├┼┼●●┼┼
├┼●┼
├┼┼┼
├┼●a┼┼┼
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 タケフの両ノゾキ一方の石が無駄手になっている悪形ですから、タケフの両ノゾキにならないように配慮が必要です。
 左図白1ツキアタリに黒aタチはタケフの両ノゾキになってしまうので、それを避けて黒2コスミと打つのが石の形です。

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 なお、タケフは通常の状態では切れませんが、手数は意外に短く、オイオトシで切られてしまうことがありますから、ダメヅマリには気を付けなければいけません。
 左図(1)黒▲▼はタケフですが、ダメヅマリのため左図(2)白1ハネコミを打たれると黒▼が取られて白◇が生還してしまいす。
 黒▼がアタリだからと左図(3)黒2ツギを打つと白3ハネコミから白5アテでオイオトシとなって黒はまとめて取られてしまいます。

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